代替肉とは家畜や魚介類の肉の代わりとなる食品のことです。
代表的なのが植物原料を使用した大豆肉で、動物細胞を培養して作る培養肉も研究開発が盛んに行われています。
背景としては人口増に伴う環境意識の高まりや食糧難への懸念、健康志向、動物愛護などがあり、若年層を中心に代替肉を選ぶ人は増えています。
先日仕事で参加した食品展示会には代替肉(特に大豆肉)のブースが多く並んでおり、注目度の高さに驚きました!
アメリカやオーストラリア等、肉の消費量が多い国を中心に発展している代替肉ですが、
日本でも日本ハムや日清食品ホールディングス、不二製油など多くの有名企業が代替肉の研究開発に注力しています。
ベンチャー企業も積極的に参入しており、益々発展が予想される代替肉について深掘りしてみていきましょう。
代替肉は植物肉、培養肉、昆虫肉に分類できる
代替肉の類似名は多く、プラント・ベースド・ミート、フェイクミート、疑似肉、アナログミート、
ダミーミートなどと呼ばれます。
代替肉は『植物肉』、『培養肉』、『昆虫食』に大別されます。
- 植物肉:植物原料(主に大豆やエンドウ豆)を使って肉を再現したもの
- 培養肉:動物の筋細胞などを培養して増殖させたもの
- 昆虫食:昆虫を食材として食べること
植物肉
大豆やエンドウ豆、コンニャク、小麦などの植物性タンパク質を抽出して加工し、着色料、香味料などで肉の味や食感に近づけています。
代表的な植物肉が大豆肉です。大豆タンパクを繊維状にし、肉のように見立てたものを大豆肉と言います(別名:ソイミート、べジミート)。
大豆はアミノ酸スコアが高く、栄養価が高いことで知られます。また、他の植物原料と比較して、生産量が多く、枯渇の心配も少ないことから、大豆は優れたタンパク源であると言えます。
イギリスを中心としたヨーロッパでは、『クォーン』と呼ばれるキノコ代替肉も存在します。
クォーンはキノコの根(菌糸)を発酵させることで得られる『マイコプロテイン』という無味の食品を加工したものです。マイコプロテインを用いて作ったキノコ代替肉の特徴は、肉のような弾力を再現できることです。
すでに製品化され、スーパーなどで販売されている植物肉も多いです。先週イオンに行った際には、マルコメさんの「大豆のお肉」を見かけました。
乾燥タイプなので、水でもどしてパスタソースやハンバーグに使えるみたいです。価格は358円/100g(税込)。私のような庶民からすると、少しお高めに感じていしまいます。
培養肉
培養肉は肉の細胞を培養することで増殖させた『細胞の塊』のことを指します。
牛や鶏などの動物から採取した幹細胞や筋肉細胞を培養し、必要な栄養を提供して増殖させます。これにより、本物の肉と同様の組織や味を持つ肉を生産しようという試みがなされています。
2022年には日清食品ホールディングスと東京大学の共同研究によって、日本初の「食べられる培養肉」が誕生しています。
培養肉は技術が確立すれば、植物肉よりも生産効率が良いと考えられており、低コスト化が可能な代替肉としても期待されています。
昆虫食
昆虫食は昆虫を食材として食べることを言います。
肉や魚の代わりとなるタンパク源という意味では、昆虫食も代替肉と表現することができます。
日本ではイナゴやハチノコの佃煮が広く食べられてきました。現代では昆虫食は味や見た目の点から敬遠されることが多いのですが、タンパク源としては優秀です。最近では、数多くの企業が食用昆虫の養殖事業に参入しています。
海外では昆虫食の事例が多く、中国や東南アジアではセミの成虫や幼虫、メキシコや南アフリカではカメムシを食べることもあります。
私はミールワーム(ゴミムシダマシという甲虫の幼虫)の素揚げを食べたことがあります。見た目がグロテスクでしたが、味はエビやカニといった甲殻類に近く、美味しかったです。
昆虫をパウダー状にして加工した食品であれば、見た目に関係なく、美味しく食べられそうです。
なぜ代替肉が注目されるのか?
代替肉が世界中で注目されるようになった背景には何があるのでしょうか?
代替肉は元々ベジタリアン(菜食主義者)やヴィーガン(厳格な菜食主義者で、卵、乳製品も拒絶する)向けに開発・発展が進んできましたが、現在ではそれらに属さない人々にも受け入れられつつあります。
秘密を紐解くキーワードは『地球環境と食糧難』です。
環境|地球環境問題への意識の高まり
代替肉ブームの先駆けとなったのが、米国の環境意識の高い人々です。
家畜を育てるためには、大量の飼料(エサ)が必要です。
1kgの精肉になるまでに必要なエサの量で考えると、牛は約11kg、豚は約7kg、鶏は約4kgのエサが必要となります。
これらの家畜が成長するまでに消費する大量の植物や、排出する温室効果ガス(二酸化炭素やメタンガス)が地球に負荷を与えるため、家畜肉をやめて代替肉を食べようという訳です。
食糧難|人口増に伴う食糧難に先手を打つ
代替肉が注目されるようになったきっかけとして、2015に国連が提唱したSDGs(Sustainable Development Goals)が挙げられます。
持続可能な社会の実現のために、17個の目標を定めたのがSDGsですが、2つ目の目標が「飢餓をゼロに」です。
この目標の具体的な達成基準として以下のような記述があります。
なんだか難しそうな表現になっていますが、要は「飢餓を無くすために、食料や食料に関する技術(作物の栽培技術や遺伝子操作技術など)を公平に使っていきましょう」という意味かと思います(2020年はもう過ぎているのですが…)。
近年、世界人口は急速に増加しており、2024年現在で81憶人、2050年代には100憶人に達すると言われています。
人口の増加に食料供給が追い付かなければ、人類は食糧難に陥ります。
日本も例外ではなく、競争力が落ちる中で、諸外国に国内の食べ物を買いたたかれる可能性もあります。
今後、貧富の差がますます開くと考えられていますが、食糧難になった際、家畜肉や魚といった新鮮なタンパク源を入手できなくなるのは、貧しい人々です。
それらの対応策として、安価で大量に生産可能な代替肉が求められているのです。
【代替肉が求められる理由】
- 地球環境問題への対応:家畜肉は生育過程で大量の温室効果ガスを排出する→代替肉を食べよう
- 食糧難の解決:2050年代には世界人口は100憶人を突破し、食料不足に陥る→代替肉を食べよう
代替肉市場の現状と課題
【現状①】 シンガポールの食品庁が2020年に世界で初めて培養肉の販売を承認
シンガポールの食品庁(SFA)は2019年11月に培養肉を含む新規食品(ノベルフード)の規制枠組みを作成しました。
そして、2020年にはプラントベース・ミートよりも技術的ハードルの高い培養肉がレストランで提供されています。
【現状②】 スターバックスも代替肉を導入
2022年からスターバックスでも代替肉を使用したメニューを提供しています。
その名も『スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン』。ソイパティなので、大豆肉です。
代替肉ではありませんが、プラントベースのスイーツも続々登場しています。2024年6月26日には新しいプラントベースメニュー『レモンキューブケーキ』が発売されました。
スタバのような有名企業も代替肉を取り入れている点からも、注目度の高さがうかがえます。
【代替肉の課題】 アメリカの代替肉事情|ブームは下火!?
代替肉ブームの火付け役となったアメリカですが、現在、ブームは下火のようです。
近年、特にコロナ渦は環境意識の高さや健康への意識が代替肉の需要を下支えしていました。
しかし、代替肉が高価であることや味の再現が難しいとの理由で、注目度は以前より下がっているようです。
大豆肉の味や風味の課題としては、パサつく食感の改善や大豆臭さの解消、油の甘さの再現などがあります。
環境ブームは下火ですが、代替肉に期待される役割は、地球環境負荷を減らすことだけではありません。
そう、食糧難の解決です。
個人的には、食糧難の解決に果たす役割の方が大きいと思っています
来る食糧難に備えて、どれだけ低コストで美味しい代替肉を作れるかは、人類にとって非常に重要な課題だと思います。
これから企業間の開発競争が活発になり、代替肉の技術革新が活発に行われることを願うばかりです。
代替肉の実食レビュー|大豆肉はかなり高いレベルの再現度!
さて、代替肉のお味はいかがなものでしょうか。
先日、食品の展示会に参加した際に代替肉の試食をする機会がありました。
何回か試食しましたが、やはりほとんどが大豆肉でした。
大豆肉はナゲットやパスタソース等の具材として使用されていました。
あるブースでは、大豆肉を使ったギョーザを出しており、試食させてもらいました。
「どうせ大豆だし、肉の味なんかするものか」と思っていた私。
そして、一口食べて驚きました。「肉のうまみを感じる!」
私の舌では本物のギョーザと違いが分からない程、ジューシーな肉の味を感じました(企業努力のたまもの!)。
他にも、エンドウ豆でエビを再現したり(こちらもなかなかの再現度でした)、こんにゃくでラーメンの麺を再現したりと、動物タンパクを植物タンパクに置き換えた食品が多いことに驚きました。
大豆肉に関しては、ミンチ状ものが中心で、焼き肉のようなシート状の大豆肉は見つけられませんでした。
ミンチだと、他に混ぜ込む材料で大豆の風味や味をカバーできます。一方で、一枚肉だと、大豆のパサパサした食感や臭いをダイレクトに感じるため、ハードルが高いのかもしれません。
一枚肉は培養肉の得意分野かもしれませんが、出てきたら試してみようと思います。
日本企業も続々参入!
海外を中心に発展してきた代替肉ですが、日本でも企業間の研究開発競争は始まっています。
日本は元々、醤油や味噌、豆腐など、大豆を加工して生活に取り入れてきたので、大豆肉は得意分野ですね。
「カゴメ」や「マルコメ」、「伊藤ハム」、「日本ハム」、「不二製油」といった有名企業が代替肉ビジネスに参入しています。
「日清食品ホールディングス」は東京大学と共同で、培養肉の研究に乗り出しています。培養肉を立体的に組み上げる技術の確立を目指しており、近い将来、培養肉の焼き肉が食べられるかもしれません。
さらに大豆肉のスタートアップ企業である「DAIZ」や培養肉のスタートアップ企業の「インテグリカルチャー」も参入しており、研究開発はさらに加速しそうです。
【まとめ】代替肉は来る食糧難を解決する鍵
まだまだ課題は多いですが、代替肉は世界の食糧難を解決する可能性を秘めています。
代替肉は今やヴィーガンや環境活動家のためだけの食べ物ではありません。
研究開発が進み、コストが下がれば、「牛肉、豚肉は高いから、今日は大豆肉ね」なんて精肉コーナーで話す日が来るかもしれません。
代替肉のステーキが食べられる日を楽しみに、私もお仕事がんばります。
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